蒼い月

7/13
前へ
/95ページ
次へ
赤い夕日が、 近くのマンションの シルエットに沈んでいく。 「・・・今日は、  もうそろそろ帰ったほうがいいよ           夏美ちゃん。」 「・・・うん、そうするね」 丁度、夕暮れになり 家の近くまで送って行こうと 公園を出た瞬間、 どこからか視線を感じた。 この感覚は? もしかして?! 近くに他の死神がいる!? 辺りを見渡すと、 公園の入口に立っている電柱の陰に 黒い女の死神が立っている、 目深にフードを被っており 前の部分から長い髪は見えているが 顔は全く見えない・・・。 足音も無くスーッと こちらに近づいてくる。 「・・・何故、殺さない?」 黒い死神は、どちらの方向も 見ずに僕に語りかけてくる。 無機質な声だ。 それに必要以上の言葉を言わない。 「ほおっておいてくれ。僕の獲物だ!」 黒い死神に、そう言い返した。 うう、頭が割れそうに痛い・・・。 今にも、この少女を 殺してしまいそうだ・・・。 あれ? 何故、殺さない? 何故、僕は躊躇っているんだ? 何故、僕は我慢をしているんだ? ・・・何故?? 死神は感情を持ってはいけない。 「夏美ちゃん、  この辺でサヨナラしようか」 僕は、別れの挨拶をする。 「うん。  もう家の近くまで来たからね。」 「・・・最後に・・  言い残す言葉は無いかい?」 「あ、じゃあ来週の日曜日に  お母さんに一緒に会いに行こうよ」 僕が、俯いたままでいると 「約束だよ?」 不安になったのか? 僕の顔を下から覗き込み、 聞き直してきた。 「あぁ、解かった。  約束だ。さようなら!」 僕は、顔を上げて笑顔で答えた。 「じゃあね、バイバイ!」 少女が手を振って、 サヨナラを告げ後ろを 向いた瞬間に・・・。 鎌を振り下ろす! ザクッ! また、スケッチブックと クレヨンが足元に転がる。 そして、ここの世界に来て初めての 小さな友達は倒れた。 小さな魂は光り輝きながら、 こっちを見て笑顔で天に昇っていく。 何故、この子は笑えるのだろう・・・? ・・・僕は一体何をしているんだ? 鎌をそのまま握り締めて立ち尽くしている。 すると、黒の死神が近づいてくる。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加