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全く、あの二人は怖じ気付いたのか。
雄太は暗闇に消えた悠人の背中を頭から削除した。
「あいつらを驚かしてやるか…」
雄太は少し意地悪になっている自分を笑った。
ドアに手を掛け、ゆっくりと横へスライドさせる。
ぼんやりと月の光に照らされた部屋にいくつかの机が放置されている。どれが冴子の机なのだろう。
雄太は一つひとつ丁寧に探した。
肌触り、色、臭い。その三つが一つに重なった机があった。
ザラザラとした質感、年を重ねて黒くなった表面、そして極め付けは線香の臭い。
何人もの生徒が実践したのだろう。机には線香の臭いがしっかり残っていた。
「これだ…」
雄太はそれを担ぎ上げた。
これを3年4組の教室まで持っていく。そこが冴子のクラス。
雄太は不気味に笑った。
「あいつら、ビビるぞ」
雄太は準備室を後にした。
静かな準備室はだんだんと暗くなっていった。月が雲に隠れ、辺りを闇の世界へと変えてしまったのだった。
『ワタシノ…』
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