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『3年4組』
表札を一度確認してからドアに手を伸ばした。
線香の臭いはこの教室からする。雄太はきっとこの中だ。
悠人は勢いよく中に飛込んだ。
「うわッ…何だこれは…」
教室の中は線香の煙で真っ白になっていた。その奥には倒れている雄太の姿があった。
悠人は雄太の元へ駆け寄った。
「おい、雄太!雄太!」
雄太は完全に気を失っていた。そして、雄太の目の前には線香が黒くくすんだ机に備えられていた。
「雅也、雄太を運び出すから手伝ってくれ!」
悠人の声にハッとしたのか、先ほどまで入り口でつっ立っていた雅也が近くに寄って来た。
「何があったんだ…」
「さぁな…とにかく、今は雄太を運び出さなきゃ!」
二人で雄太を担いで外へ出ようとした時だった。
『ワタシ…』
「雅也、何か言ったか?」
「いや、何も…」
『ワタシノ机…元二戻シタノハ誰…』
よく聞けば机の方から声が聞こえる。悠人は恐る恐る机を見上げた。
「あ…あぁ…」
声に出せない恐怖が悠人を襲った。
髪の長い冴えない女性が鋭い眼光を放ちながらこちらを睨んでいた。
「さ…冴子…」
『コノ教室ナンテ見タクモナカッタノニ…』
悠人は足をガクガクと震わせながら冴子を指差した。
『貴様カ…ワタシノ机ヲ…』
「ち、違う…俺じゃない…」
悠人は雅也と二人で雄太を外へと連れ出した。
「に、逃げるぞ!!!!」
悠人の声と同時に雅也は雄太を担いで走り出した。
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