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隣にいる男の子は母の傍らに黙って行儀よく座っている。
そんな男の子を母はちらりと見て、やっと静かに口をひらいた。
『ねえ、絵美。この子、翼ににてると思わない?』
翼とは私の息子の名前だ。突然母の口から予期せぬ言葉、それも愛しい今は亡き息子の名前をだされ、私は激しく動揺してしまっていた。
『そうね。』
そう一言いえばすむこと。でもそれを言えばまた私は泣いてしまいそうで、言葉を発することが出来ずにただ母と男の子の方を見つめた。
母は私の返事を待たずに話を再開した。
『この子、2週間ほど前に、母さんが勤めてる養護施設の玄関に座ってたのよ。2週間待ってみたけど親は迎えに来なかったわ。』
『・・・何がいいたいの?』
やっとのことで口から言葉を発することができた。といっても私の動揺は最高潮にたっしていて、母の言わんとすることをまともに受け止めることは不可能だった。
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