カミヲクレ

4/9
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
時刻は九時と少し。 暗闇は一層深く、月や星の姿はない。 ただ一本。 校門の前に立っている街灯のみが辺りを照らしていた。 「よし、全員揃ったな」 既に校門の前には康弘、隆彦、真紀の三人が居た。 遅れて来た早苗に怖かったのかなどと言ってからかう。 「違うよ、ただ……」 ほらと早苗はショルダーバッグから黒いもさもさとした何かを取り出して見せた。 「カツラ……だね」 「……ぷっ、早苗怯え過ぎよ~」 「あははは、そんなの用意しても意味ないって」 どうせ幽霊なんて出ないんだしと三人が大声で笑う。 その姿に早苗は恥ずかしく、頬を朱に染めた。 「でも万が一さ……」 「はいはい、万が一になったらみんなが早苗を守るから心配しないのっ」 「そろそろ行こうぜ」 懐中電灯を右手に康弘が校門を飛び越える。 その後を無言で隆彦が追った。 「ほら、早く行きましょう早苗さん 向こう側から二人が誘う。 仕方なく。 本当に仕方ないからと早苗は行きたがらない自分に言い訳をし、真紀と一緒に校門を越えた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!