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時刻は九時と少し。
暗闇は一層深く、月や星の姿はない。
ただ一本。
校門の前に立っている街灯のみが辺りを照らしていた。
「よし、全員揃ったな」
既に校門の前には康弘、隆彦、真紀の三人が居た。
遅れて来た早苗に怖かったのかなどと言ってからかう。
「違うよ、ただ……」
ほらと早苗はショルダーバッグから黒いもさもさとした何かを取り出して見せた。
「カツラ……だね」
「……ぷっ、早苗怯え過ぎよ~」
「あははは、そんなの用意しても意味ないって」
どうせ幽霊なんて出ないんだしと三人が大声で笑う。
その姿に早苗は恥ずかしく、頬を朱に染めた。
「でも万が一さ……」
「はいはい、万が一になったらみんなが早苗を守るから心配しないのっ」
「そろそろ行こうぜ」
懐中電灯を右手に康弘が校門を飛び越える。
その後を無言で隆彦が追った。
「ほら、早く行きましょう早苗さん
向こう側から二人が誘う。
仕方なく。
本当に仕方ないからと早苗は行きたがらない自分に言い訳をし、真紀と一緒に校門を越えた。
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