カミヲクレ

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「康弘……帰るぞ」 足が竦んで真紀と早苗は動けない中、康弘は男子トイレの中に猛進しようとする。 ところが隆彦に痛いくらいに腕を握られ、進行を止められてしまった。 「なんだよ、これからがいいところじゃねぇかよ。臆病風に吹かれたか?」 この時康弘は、タネを明かした後の女子の怒りのことのつもりで言った。 しかし、三人はそれとは違う意味を持ってしか捉えられない。 康弘は隆彦の腕を振り払い、すっとトイレの奥へと進んでしまった。 電気は無く、懐中電灯片手に向かう康弘の背に隆彦が叫ぶ。 「この状況で誰が再生なんて出来るんだよ!!」 あれ? 確か俺が先導を切って、こっそりリモコンで再生すんだろ? え? でも俺はリモコンなんかこれっぽちも触ってなくて………………。 康弘ね頬に冷や汗が滴る。 「だから、ヤバいって!帰るぞ康弘!」 「やだー、帰りたいよぉぉ」 「マジヤバいって、何なのよこれ」 待てよ、待てよ待てよ待てよ。 幽霊なんている訳ないだろ? なんかの誤作動だって。 だからラジカセを確認したら平気って分かるって。 「待ってろ!」 康弘は今一度逡巡を払うと走って奥へと。 小便器の影に、隆彦と割り勘で買ったラジカセを見つけるとすぐに駆け寄り、様子を見る。 …………電源すら入っていない。 つまりだ、 「マジかよ……」 「紙をくれ」 ふいに背後から声がした。 とっさに振り向くとそこにはてがあってせまってきてつかまれて、それで、それでそれでそれでそれでそれでそれでそれでそれで…………………。 「こっちの髪だ」 「ひぎゃあぁぁぁぁあ!!!!」
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