【しるすの野球論】

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安東しるす というまつげの長い南国風の顔をした野球部員がいた。 彼はとにかく数学の石丼先生に好かれていたし、本人も好かれようと努力していた。 石丼先生はベートーベンのような髪型で縁なしメガネをかけていた。そしてしばしば数学の話題の延長(?)で別の話をした。 例えば夕べテレビでハンドロイドの特集があったとか、○阪大学の設備は素晴らしいとか。 ある日石丼先生はしるすにこう言った。 「安東、打球が一番よく飛ぶ角度は地面に対して何度や?」 しるすは話を途中からしか聞いていない様子だった。 焦った様子で僕に尋ねてきた。 「なぁなぁ(僕)さん、何度?」 「90度やろ」 安東「90度です!!!!」 石丼「はぁ??考えて喋れよ。じゃあ(僕)何度?」 僕「45度ですか」 石丼「そーやろが。安東は万年キャッチャーフライしか打てないから~。」 その後しるすはなぜ0度でもなく90度でもなく45度が一番よく飛ぶのかを説明させられていた。 しるすはそれらしいことを言ったが結局のところ石丼先生が言うには45度が真ん中だから一番よく飛ぶらしい。 しるすには笑いの種をまいてやったのだから多少なりとも感謝して欲しい。
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