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Tにはとにかく運動能力が備わっていない。
でも運動能力がないことを自覚していたら何も文句は言わないし同情する。
文句があるのは入学早々体育委員に立候補したからだ。
Tには運動能力がないことを周りが何となく気付いた頃の7月に球技大会があった。
どういう訳か僕の出たバレーボールには割と運動ができる人が集まっていた。
それにもかかわらず6人目にTか土丼を出さないといけないという明らかな戦力不足に喘いでいた(ちなみに土丼はバリボーが下手クソだった)。だから二人を前半後半で使い分けることにした。
試合前にトスやレシーブで球をつなぐ練習をした。
なぜかみんなのトスはTに集まった。本当にたまたまだ。
Tはアンダーレシーブを顔の高さでしようとするので球が全て後ろに飛ぶ。
それを三樹くんが拾いに行く。
センスないなぁとみんなが思っているときに事件は起きた。
「デコポンッ」
Tはトスを上げようとしたのだった。
…が、なんと空振った。
無情にも球は上を向いたTの顔面に食い込んでいた。
次の試合ルールを無視してTを封印して負けた。
顔はキレていた。
自覚して欲しかった。
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