123人が本棚に入れています
本棚に追加
柊一はただ早紀子に電話をしたのではない。
話したいこと、聞いてほしいことがあったからだった。
「あのさ…そこって、鎌倉から近いんだよね」
《うん》
「これから鎌倉で仕事があるんだけど、もしよかったら昼飯、どうかな?
時間があるなら…」
ためらいがちに柊一が言うのと同時に、早紀子の友人―吉野萌が早紀子の肩を軽くつついてきたので早紀子は振り向いた。
―家の人から?
萌は口だけ動かして早紀子に尋ねた。
「あ、ちょっと待って」
柊一にそう告げてから、萌に首を横に振ってみせた。
「飛鳥井くんからだよ。
これからまた仕事で鎌倉に行くんだって。
それで、お昼一緒にしないかって言ってるんだけど…」
「行ってらっしゃいよ。
飛鳥井くんが早紀ちゃんをご指名で誘ってきたんでしょ?」
「指名されてなんかないもん」
「いいじゃん!
会ってきたら」
萌に押されて、早紀子は柊一の誘いにのることにした。
「ごめんね、待たせて。
あのね―」
時間と待ち合わせ場所を決める中、隣にいた萌はうんうんと頷きながら微笑んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!