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五ヶ月目だと降ろすことも出来ない。それに赤ちゃんに罪は無い。
「葉月、病院に行っていたみたいだが何処か悪いのか?」
普通の父親のような顔で普通の父親のように心配している男…。
「妊娠した…」
そう無表情で答えた。一気に父の顔が青ざめる。
「誰の子だ…?」
「あんたしかいないでしょ」
吐き捨てるように答えた。
父は黙ったかと思うとおもむろに立ち上がり、一歩一歩と近付いてきた。
次の瞬間、世界が歪み、ゆっくりと回る…。
床に倒れて自分が殴られたのだと知った。
そして父は何度も何度も何度も何度も私のお腹を蹴った。
新しい命が宿った場所を…。
「何人にもヤらしてるんだろう?そのいやらしい身体で誘ってるんだろう!?」
…蹴られ始めてから十分はたったであろうか?
父はやっと蹴るのを辞め、椅子ではなくソファーに体を沈め、煙草に火を付け、ニュース番組と新聞に目を落とした。
痛む腹を抱えて椅子に捕まりながら立ち上がった。
テーブルの上にはガラスで出来た重い灰皿…。
その灰皿を右で持ち、そっとソファーにいる父に近付く…。
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