第二章 黒谷

3/8
1029人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
いきなりの、特命? 二年ぶりだけれど、遠慮しない物言い。 「な、何なりと……」 あたしは高まる気持ちを抑え、やっとのこと返答した。 「本旨は、口外無用だ」 生唾をごくりと飲む。 部屋の外に控えている佐吉も、この空気、きっと感じ取っている。 この黒谷のお寺は、知恩院と共に、お城の役目も果たすように作られた寺院だと聞いた。 なるほど、造りが城とよく似ている。 小高い山上に本殿。 周辺はぐるりと、森林が囲み、自然の要塞か。 門を通らないと、こちらまでは来れない。 このような場所に詰めていて、 ここまでくる途中の京の様子から推察するに、治安も社会情勢も、思っていた以上に複雑そうだ。 殿……。 サクラは、きっと、 このために殿のお側にお仕えしていたのですね。 「サクラには、壬生の新選組の屯所へ行ってもらう」
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!