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「サクラ様、お気づきになりました?」
ふいに佐吉がこっちをみて小さく笑った。
「な、にが……?」
高鳴る胸を押さえて、あたしは返事をするのが精一杯だった。
「旅をしていると、こうして周りの自然と一体になれるんですよ」
佐吉は気持ちよさそうに風に当たりながら続ける。
どこか、遠くを見るような目で。
「サクラ様は、これと決めたら周りを全然見ようとしない。でもそれは、人生の半分以上を損していることになるんですよ。
この旅だって、京の一歩手前で、ようやく気づかれた」
でもそれは、佐吉が──。
「よかったですね、おばあちゃんになる前で」
「!!」
「ぷっ」
今度はさっきまでと打って変わり、吹き出したらお腹を押さえて笑い出した。
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