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「サクラ様……」
佐吉の顔が歪むのが、見なくったってわかる。
言っちゃいけないこと、言っちゃった…?
あたしは唇を噛み締めた。
「サクラ様は、まだ、……」
「違うわよ」
あたしは自分でもびっくりするくらいの大きい声を上げていた。
そして、そんなに強く否定しなければならない、自分自身にほとほと嫌気がさす。
「そんなつもりじゃ、ないのよ、もう」
自分の言葉を振りきるように、あたしは立ち上がるとさっさと歩き始めた。
私の背中の向こうで、佐吉がため息をついたのがわかる。
「サクラ様がまだお気持ちを引き摺っていらっしゃるのなら、佐吉はサクラ様を連れて会津へ引き返さねばなりません」
「……」
佐吉を振り返ると、そこには、いつになく真剣な──というより、怒りを秘めた──目であたしを見据える。
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