第一章 上洛

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只三郎様は、あたしより十四歳長上の、もう会津にはいないけれど剣がとてもお強い方だった。 諸事情であたしは八つの頃から城に上がり、雑事を任されていた。 お城仕えも数年過ぎた頃、あたしの働きを認められたことと、生家は上士の家柄だったこともあり、殿のお側仕えの大役を与った。 そのため、直接御家老や公用方の家臣と直接お話をする機会が多かった。 そして、あたしは只三郎様と出会ったの。 これが、もう四年前。 実際、同じ時間を過ごしたのは、そう長くはなかったと思う。 出会ってすぐの頃に、只三郎様は江戸に養子に出され、それっきり会津に戻ってくることはなかった。 けれど、あたしにとって、 今まであたしが過ごしてきた時間よりも、 ずっとずっと、永いものだった。
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