第一章 上洛

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そんなだから、京都へ行くことになってもあたしは残留組に入れられたのだろう。 あたしは当然、殿のお側仕えとして、京でもお供するのだと思っていたから、もう自害するっていうくらい取り乱して、佐吉や周りの人にかなり迷惑を掛けてしまった。 そんなあたしに、左吉は、殿はあたしに会津を任せて下さったんだと、励ましてくれた。 実際に殿のお考えは分からないけれど、その心遣いに応えようと、殿の留守をお守りにした。 もともと藩の財政に余裕はなかったのに、追い討ちを掛けるように京での資金も必要になってしまい、かなり苦しい生活だった。 なぜ、そうまでして、殿は京にいらっしゃったのかしら。 殿のお側に使えていた頃は毎日雑事に追われ、政といったらたまに殿から相談を持ち掛けられる程度で、藩政に関心を持ったことはなかった。 けれど、城主不在の城下を守るためにあたしも書物を読んで学び、そしてだんだんあたしの興味は、世の中に広がっていった。 きっと今あたしたちが生きている時代は、後々お国の歴史書な書かれるようになるに違いない。 会津のためなら、あたしも京で殿といっしょに戦いたい。 そう申し上げたら、殿はきっとカラカラ笑って、 「いくさをしに行くのではない」 とおっしゃるかしら。
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