第一章 上洛

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だから、此度のお呼びだし、あたしは本当に嬉しかったの。 この激動の時代に、あたしは“女の子”でいたくなかった。 肌で感じる、時代の流れ。 この二百五十年間動かなかった空気がゆっくりとうねりをつくる。 そんな時代にあたしは生まれた。 しかも、殿のお側にいられる。 ぬるま湯に浸かっているのがいやで、あたしは上洛を言い渡されるや否や、佐吉を連れて鶴が城を飛び出したのだった。 あたしはゆっくりと歩き出すと、 「佐吉」 佐吉は、黙ってあたしの後を着いてくる。 「あたしは、今しかできないことを、やりたいのよ。 殿と…、会津のためにね」 佐吉はなんだか納得のいかない顔をしていたけれど、それ以上、この話題を出すことはなかった。
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