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佐吉が言うことはもっともだ。
確かに疲れたし。
のどが渇いたし。
寒いし。
鼻水も垂れるし。
それでも、あたしはいてもたってもいられなかった。
だけど、一休みしたいのも確かだ。
そこで、ちょうど見えてきた茶店に駆け込む。
「お姉さん、団子三つとお茶二つ下さいな」
「サクラさま、三つですか?」
運ばれてきた三皿の焼き団子とあたしを、佐吉は交互に怪訝な目で見比べる。
あたしは団子を二皿口に押し込み、お茶で流し込んだ。
「あっつい!」
「サクラ様、せわしないですよ」
あたしにつられて、佐吉もすごい早さで団子を平らげた。
さっさと身なりを整えると、
「十分休んだわ、行きましょ」
あたしは金襴緞子の包みに納められた薙刀を担ぐ。
さっきまで佐吉が担いでいたものだ。
「ああ、おなごなのにそのような。私が持ちますから、もう……」
佐吉が店のおばあさん(あたしはお姉さんとか呼んだけど)に慌てて勘定を頼んでいる姿は背中の向こう。
ゆっくりなんか、している時間はないのよ。
あたしの足取りは強かった。
殿、
サクラは、間もなく参上いたします。
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