第一章 上洛

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「ご、ごめん」 やっとの思いで絞り出したのは、そんな陳腐な言葉だった。 「あたし、そういうつもりで言ったんじゃあ──と言うか、いつも、何も考えないで喋ってて──」 あたしが顔全体を真っ赤させ、しどろもどろになるのを見ながら、佐吉は小さく笑った。 「紅葉みたいな色になりましたね」 ちょっと、誰のせいよ。 こんなになったのは。 頬を膨らませ、佐吉の肩をこずく。 「私も、サクラ様を困らせるために申し上げたわけではありませんよ」 佐吉はまだ可笑しそうに笑う。 あたしは恥ずかしいんだか、悔しいんだから分からないけど、赤い顔を袂で隠す。 「はは、隠したら可愛い顔が見えませんよ」 また変なことを言う。 「ちょっと、佐吉! 主人をからかって楽しいの」 「いいえ?」 明らかに、楽しんでいるわよね。 いくつも年は離れていないのに、負けた気がした。 佐吉はあたしの足に足袋と草履を履かせると、立ち上がって問うた。 「行きますか? それとも、少し休みますか」 あたしはもう、こう答えるしかなかった。 「休むわ」
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