第一章 上洛

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あたしたちは、そのまま道端の岩の上に腰掛けて休むことにした。 うなじに汗で張り付いた髪を、涼やかな風がぬぐう。 いつの間にか秋が深まっていたのだ。 武州、箱根、東海道と上ってきたが季節が少し違って感じられた。 ここの風の冷たさは会津に似ている。 落葉を始めた広葉樹の根元を足で探ると、カサカサと乾いた音がした。 頭上を鳶が、ピーロローと鳴きながら通り過ぎる。 初秋の風が木々を揺らす音を、なんでか懐かしく感じて──、 旅って、日常からの離脱なのかな。 ふと、そんなことを考えた。 「佐吉……?」 さっきから黙ってるのは、何で? そこまで言えなかったけど。 やっぱり、怒っているのかしら、て……。
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