放課後

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校舎は静かだ。 西日が強く入る窓。 人気のない教室。 たった2時間で変わる風景は、 魔法がかかった様に感じる。 遠くで部活動の音。 窓からふわりと風。 ――放課後の教室って、 心地いいな… 「ね、  放課後も中々快適でしょ?」 ふふっ、と笑いながら、 私を少し覗き込む彼女。 「うん。  誰もいない教室も、  オレンジの夕陽も…  いいよね。」 うたた寝をしているように返す私。 私達は、 こうして一緒に過ごすのも 心地よく感じる仲で、 いわゆる友達。 「夕陽にね、  手を伸ばしてみるの。  ――手はオレンジ。  夕陽にとける。  このまま、何処へ行こう?」 彼女は世間で言う、 空想とか妄想が好きな高校生。 私とは逆に、 中々と深い事を言う。 「ん~。  鳥みたいにね、  飛んでみるのは?」 私は 空想とかには疎遠な分、 妥当な事しか言えない けど、 「――ああ、  それは素敵ね。  飛んで、上へ上へ。  そして今度は空にとける。」 彼女は 目を細めながら 夕方のオレンジの空を眺めて言った。 ――こうやって、 私の返事を決して消さずに、 そして 彼女のお話は続く。
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