7人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は怖くなって、着替えとタオルを持って、濡れたままに部屋へと走った。
普段は何とも思わない、梁の辺りや、廊下の隅の、光の届かない場所が、いつもより黒々として何か出てきそうで、目についてならない。
――畜生……何なんだよ……
ベタベタという俺の足音が、やけに響いて大きく聞こえる。
シャワーから水が滴っているのか、水滴が落ちる音がやけに耳につく。
――聞こえる訳ねえだろ! 気のせいだ!
部屋に飛び込み、勢いよくドアを閉める。
俺の部屋は、この家の中では、今一番明るい。
助かった様な思いで息を整える。
――気のせいだ。一人なんて、前のアパートではよくあっただろ?
ジジババの家を拡張したこの家に、引っ越して来たのはつい二年前。
一人なんて引っ越す前は何度もあった。
それなのに、こんな風に首の後ろがピリピリするのは、初めてだった。
ふと、ドアにすがった自分の髪から、水滴が滴り、肩に落ちているのに気付いた。風呂上がりにそのまま走ったから、体も冷えきっている。
――なんだよ……寒いのも、水滴も、自分のせいじゃねえか。
「あ、はは。俺って馬鹿」
一安心しながら、体を拭いて、服を着た。
でも、うなじの、静電気のような感触は消えていなかったけれど。
最初のコメントを投稿しよう!