ばあちゃんは

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俺は怖くなって、着替えとタオルを持って、濡れたままに部屋へと走った。 普段は何とも思わない、梁の辺りや、廊下の隅の、光の届かない場所が、いつもより黒々として何か出てきそうで、目についてならない。 ――畜生……何なんだよ…… ベタベタという俺の足音が、やけに響いて大きく聞こえる。 シャワーから水が滴っているのか、水滴が落ちる音がやけに耳につく。 ――聞こえる訳ねえだろ! 気のせいだ! 部屋に飛び込み、勢いよくドアを閉める。 俺の部屋は、この家の中では、今一番明るい。 助かった様な思いで息を整える。 ――気のせいだ。一人なんて、前のアパートではよくあっただろ? ジジババの家を拡張したこの家に、引っ越して来たのはつい二年前。 一人なんて引っ越す前は何度もあった。 それなのに、こんな風に首の後ろがピリピリするのは、初めてだった。 ふと、ドアにすがった自分の髪から、水滴が滴り、肩に落ちているのに気付いた。風呂上がりにそのまま走ったから、体も冷えきっている。 ――なんだよ……寒いのも、水滴も、自分のせいじゃねえか。 「あ、はは。俺って馬鹿」 一安心しながら、体を拭いて、服を着た。 でも、うなじの、静電気のような感触は消えていなかったけれど。
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