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直ぐにベッドに入る。
暫くして寝ていると、また。
「かみが」
今度はまるで、耳の横で言われた様に、生暖かい空気が耳にかかった。
「かみ」
恐ろしく、冷たい、もの。
それが首筋を伝い這った。
硝子の割れる様な破裂音。
それと同時に部屋の灯が消えた。
「っ!?」
一気に目が覚めた。
体中の血が一気に足の方へ下がった。
――今の……手!?むちゃくちゃ冷たい!!
思うと同時に、逃れる様にベッドから落ちる。恐怖に凍えそうになったが、その手の方へ、バッと顔を向けた。
……だが、暗くて見えない。
「かみがないんだよ」
ばあちゃんの声が、今度は部屋のドアの向こうから聞こえた。
体が、激しく、震え始めた。
――ばあちゃんじゃねえ!
真っ暗な部屋の中で、激しい電気のショートする様な音が至る所でし始めた。
歯が、ガチガチと鳴る。
「安彦……かみが…」
今度は窓の方から。
「かみ」
今度は天井から。
「かみ」
今度は、俺の下から。
「かみ」
「かみ」
「かみ」
「かみ」
「かみ」
俺はヤケクソになって叫んだ。
「さっき置いただろ!」
叫んだと同時だった。
俺の髪がグイと後ろへ引かれた。尋常でない程勢いよく。
「お前の髪だ!」
虚ろな暗い眼窟の、透ける白い顔が、視界を覆った。
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