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3
黄金町駅の前までやってきた俺は、これからどうするか考えていた。
あまりにもお粗末過ぎる初体験に、空しさだけが膨れ上がっていた。
このまま家に帰ろうか?
家に帰れば親が用意してくれた飯を食って、寝ることが確定している。
そして明日からはいつもと同じ、温いマンネリ化した日常生活が待っている……。
俺は思いとどまって足を止めた。
今、家に帰ってはダメだ……。
俺は駅前の居酒屋に入った。
幸い財布の中にはまだいくらかの金が残っていた。
俺はウーロンハイと軟骨のからあげを注文して、これからの計画を考えることにした。
一人で飲んでいると時間が経つのがやたらと遅かった。
周りを見回すと楽しそうにイチャつくカップル達や、仲間内でわいわい騒いでいるサラリーマンたちの姿が飛び込んできた。
俺はいっそう孤独を感じて辛くなった。
「お兄さん、お一人ですか……」
突然、俺に声を掛けてきたのは隣のテーブルに座っていたアジア人の女だった……。
女は三十代前半のきつめの化粧をしていて、あきらかに「黄金町」の住人と思わせる匂いを漂わせていた。
「ごめんなさい。お兄さん、一人でとても寂しそうですね……。私も一人ね。よかったら一緒に飲みませんか?」
「……ええ、いいですね一緒に飲みましょうよ」
見ず知らずの女から声を掛けられたのは初めてだった……。
それ以上に俺はただうれしかった。
誰でもいいから話をしたかったんだ……。
「私、アイと言います。タイから来ました」
「俺は春日春道です」
「春日さんは、学生ですか……?」
「……俺、高校卒業して今はフリーターやってます」
「フリーター?」
「バイトしながらブラブラしてる暇人です……。今日は気分転換に横浜に遊びにきたんですけど、これからどうしようと思ってた所だったんですよ。アイさんはどうしてこの町にきたんですか?」
「私はこの町に働きにきました……。でも、紹介してもらった店が閉まっていてどうしようかと思っていたんです……」
俺が予想したとおり、彼女はタイ人の娼婦だった……。
【続く】
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