第一章 ピンクの町

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俺は北川から横浜の売春街の話を聞いていた。 北川はその時「黄金町」で童貞を捨てたと俺に自慢した。 その時の俺は風俗に行った北川をバカにしていたが、あの日を境に俺と北川の間でモテナイ男の差が生じたような気がした……。 俺は彼女を作るまで家には帰らない事を誓った。 川沿いの道を歩いている俺に外国人の女達はこれ見よがしに甘い声で誘惑してきた。 「お兄さん、サービスするね…」。 「ワタシとちょっとお話する…」。 片言の日本語が飛び交う路地を俺が立ち止まらずに通り抜けると、女達は自分達の国の言葉で俺を苦笑しているように、聞きなれない言葉で俺をやり過ごした。 初めて体験した無国籍な空気に、俺はすっかり緊張していた。 まだ一本目の路地を歩いただけだというのに、俺は家に帰ろうかと思い始めていた……。 財布の中の一万円が別の使い方を望んでいるように感じた。 しかし、次の瞬間北川や親の顔が頭をよぎり、俺は思いとどまり、町の中心へと入って行った。 俺はぎこちなく町を一周してみたが、それでも相手の女を決められずにいた……。 綺麗な女はたくさんいたがどうも気分が乗らなかった……。 初めて童貞を捧げる相手だと思うとどうしてもいろいろ考えてしまう。 そして過去に女に告白してはフラれた記憶が頭を過ぎった……。 俺はますますやる気を無くし、それでも家に帰る事もできず、近くのコンビニで気分転換しようと決めた……。 【続く】
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