通夜

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そして家族の番… 親父は泣いてなかったがこんなに悲しそうな表情は見たことがなかった 母さんはかなり激しく泣いていた 俺の棺からなかなか離れなかった 姉貴の番だ いままで数えきれないほどケンカしてきた 前に冗談で「あんたが死んでも絶対泣いてやんないんだから」とか言ってたな 姉貴はまだ泣いてなかった だが今にも泣き出しそうだった 「…なによ、みんなして…」 姉貴がボソッと言った 「夕斗が死ぬわけないじゃん!こんな下手な芝居やめてよ……ぜんぜん……ぜんぜんおもしろくない!」 姉貴の顔がみるみる泣き顔になっていく 「あんたも死んだふりなんかしないでよ……いままでの……こと全部、謝るから…もう……やめてよぉぉぉ!!」 姉貴は泣き崩れた その時、小夜子も駆け寄り一緒に泣き出した 「ユウ兄…起きてよ……サヨも……しつこくしてごめんなさい、だから起きてよぉ……ユウ兄ぃ!」 しつこくしてって…朝のことだな そんなのぜんぜん気にしてないって伝えてやりたい むしろ怒鳴ってしまったことを謝りたい…… でもできない 俺はもう死んでるから 感情が抑えられない 俺は滅多に泣かない でもそんなの関係ない…俺はこれまでにないくらい大声で泣いた 今は人に見えないから泣けるわけじゃない たとえ姿が誰かに見えていても、俺は泣き叫んでいただろう
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