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3.
道を逸れて、突き進む
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時が迫るごとに考えるのはお前のこと。
ついにその時は目前。
それを知る者は僅かではあるが。
お前は、私の道にポツリと現れた。
私の正義を唯一揺るがした、存在。
お前を置いて行くことだけが、心残りだとすら思った。
すまない、修兵。
お前は本当にいいこだった。
どうせいつかは手放すつもりなら、傍に置くべきではなかったのに。
「東仙隊長、お時間です」
「あぁ、行こうか」
「…隊長…更木隊長が旅禍を連れているなんて」
「私達の進む道は一つだ。そうだろう、修兵」
「…はい、東仙隊長」
今はこうして共に並び立ち、言葉を交わし、共有しているこの時間。
いつの頃からかそれが心地良く、手放しがたいと感じていたのに。
それも、あと僅か。処刑のその時が来れば、全て消える。
私は全てを棄てる。
私の信じる正義の為に。
「俺は東仙隊長のご指示に従います」
優秀で実直な修兵。
言葉にするのが苦手で、いつもはにかんだような笑みを浮かべる。
低く穏やかな声。
私を真っ直ぐに慕う修兵。
部下思いで自分自身も部下や他隊の者から頼られ、慕われている。
優しく、けれど強い心。
私にはもったいない程の存在。
私の隣でなければ自分の信じる道を真っ直ぐに歩いていけただろうに。
私を信じれば信じているだけ…お前は深い傷を負う。
それがわかっていても、私はお前すら棄てていく。
私の正義を唯一揺るがし、私の心に唯一躊躇いを生む。
修兵、お前を棄てるその瞬間には私の心もきっと痛むだろう。
ついに来たる今日この日。
側にいればいる程お前の傷が深くなる事など考えずともわかりきっていたのに。
それでも手放しがたく、お前をいつまでも側に置いてしまった脆弱な私を許してくれないか。
まもなく迫る、その瞬間まで。
せめてお前の慕う私のままで…
***
[東+修]
裏切り直前。
出来る事なら捨てたくはないけれど。迷いと弱さは修兵ごと棄てていく東仙。
まだ何も気づかない修兵。
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