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4.
真っ赤に染まる、視界
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あの日の事は今でも忘れない。
一瞬で、全てが変わったあの日。
親友と右目を失った、あの夜。
あれから数年。
任務の中、後輩や同僚達が死んでいく事も今ではもう珍しくはなくなっていた。
時には上司が、時には後輩が、時には友が、あっけなく死んでいく。
貴族出身の者、流魂街生まれの者、現世で死してから死神になった者。
立場も経歴も違うたくさんの死神達が、命を失っていく。
ここは戦場なのだと、誰かが言った。
そう言ったのは、さっき死んでしまった誰かだったかも知れない。
「修兵」
「…はい」
「大丈夫か」
「はい」
今度の任務でまた何人も仲間を失った。
また、新種の虚。
阿近さんに声を掛けられて始めて、技局の人達が細胞を採取しに現場に出てきたんだと思い当たった。
たくさんの死体の中で、いつの間にか残っているのは俺と阿近さんだけ。
ついさっきまで笑っていた、同僚達の死顔を、一つ一つ見つめていった。
わかってるさ、俺が特別辛い訳じゃないって事くらい。
わかってるよ。死神ってのはそういうもんだって。
それでもこうして死を見る度に、俺はもどかしい程の衝動に駆られる。
情けないのか、悲しいのか。悔しいのか、辛いのか。
「修兵」
「大丈夫だよ」
「…そうか」
どんなにもどかしくても、感情の行き場がわからなくても。
こうして誰かが死ぬ度、俺はあいつらの事を思い出す。
今思えば、俺は…泣ける程、強くはなかっただけなのかも知れない。
俺は死神だから。…割り切らなきゃいけない。そう、何度も言い聞かせた。
俺は…2人の為に泣いてやれなかった。
あの日だけじゃない。
例え何度、あの夜の事を夢に見たって。
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