シゲ-Gの冒険

携帯電話

タクトには生まれ持った人を引き付ける何かが備わっていた。呼び名も｢卜部君｣は、性に合わないとタクトかタクで呼んで欲しいとの事、私たちの世代には名前で呼び合うなんて皆無に等しいのですがこれも時代の移り変わりだと思ってそう呼ぶ事にした。
タクトは私を｢シゲさん｣と呼び慕ってくれた。いつしか私とタクトと派遣のお恵ちゃんの３人でチームを作って小さいながらも仕事がまわってくるようになった。そんなある日タクトが｢つーかシゲさんそろそろケー番教えてよ！｣といい出したので｢競馬かぁ～久しぶりだなっ！土曜日に大井でも行きますか？｣と返すと、間髪入れず、お恵ちゃんが ｢競馬じゃなくてケー番ですよ！携帯電話｣と問いただしてきた。彼女は年の差コンビを良く理解しておりいつも仲介役をしてくれて助かっている。お恵ちゃんがタクトに携帯電話を持った事がないと耳打ちすると｢つーか今どきありえないしょ！帰りに見に行きましょう♪｣とテンション⤴⤴で私の都合など聞く間もなく決まってしまった。