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そっと目を開けると左手を置いていた足は真っ赤に染まり、シャワーのお湯が血を薄め、広がりを助けていた。
「…怖いよ…。やっぱり…やっぱり怖いよ…。」
左手の手首には五センチくらいの開いた傷が、充血した大きな目のように見つめ返していた。
血は止まる事なく流れ出す。
自分を置いていってしまった二人の親から受け継がれた血。
このまますべての血が流れ出て、死んでしまえばいいのに…。
皐月はそう思っていた。
段々気が遠くなってきた。
目の前がゆらゆらと振れ、瞼が重たくなった。
頭が妙に軽くなり、全身に力が入らなくなった。
皐月はそのままシャワーの流れる床に倒れた。
長い黒髪が床の上で揺れていた。
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