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皐月は携帯を閉じた。
その携帯の閉じた小さな音が、スタートの合図だ。
皐月はまた人込みの中を歩いていく。
時計の針が当たり前のように八時にあわされた。
その頃にはさっきまでびしょびしょに濡れていた髪の毛もすっかり乾いて、長い髪は風にさらさらと揺れていた。
「皐月ちゃんかな??」
ごつごつした冷たい手が皐月の肩を叩いた。
「前払。」
皐月は顔を確認することもせずに、顔より先に掌を向けた。
何も言わず少し苦笑いを浮かべながらその男性は皐月の掌に一万円札を四枚置いた。
それがわかるとポケットにそのお札を押し込んだ。
「どこのホテル。駅前でいいの。」
「いやっ、駅前はやめてくれよ。人目につくだろ。」
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