夏の花

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  「ボウズ、コレあっちに運んどけ」 「はい」    僕は今日も生きるために働く。  泥まみれになってもいい。そうやって一日一日をゆなのために生きている。  いつか、ゆなをつれて新しい世界に飛び出すんだ。    僕らはいつか……いつかね    誰も知らないところで、  誰も知らない家をたてて、  誰も知らない2人になって。    そうやって生きるのが僕の夢。  僕のゆな。大切なゆな。たったひとりの妹。  ゆなが死んだら僕も死ぬよ。と僕がいったらゆなは、僕が死んだら自分も死んでくれると、笑っていった。    神様がなぜ僕たちをふたつに分けたのか、ねぇ誰かわかるだろうか。    君なしでは生きられない僕。  そしてきっと僕なしでは生きられない君。  たとえばふたりの心臓が一緒になってしまったって、  なんの変わりがあるというのだろう。    僕らは、やがてひとつになれる日を夢見て眠る。 ――もう、君がいないと息もできない      僕はその夜、仕事場の人がくれた小さなスイカを手に、心を弾ませながら帰路についた。小さなスイカは飾りとして棚にあったものだった。  嬉しそうなゆなの笑顔を思い浮かべて僕がお礼をいうと、その人は意外そうに驚いていた。 「おまえは、そんな顔をして笑うのか」  なぜか複雑そうな顔をした、その人の顔の方がよっぽど変だと僕は思った。前歯の足りない笑顔はおかしな迫力がある。  でも眉毛の下に光るその優しい目は、懐かしい人を思い起こさせて僕の胸をつく。    夏の風と共に、夜空をただよう星になった人――。  
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