夜の蝶

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いつものように会社で自席に座り会社のパソコンに向いながら会社が今季打ち出す春の新作ジュエリーのデザインに取り掛かっていた。 基本を崩さずかといって今までにない斬新で若い女性だけでなく歳を重ねた女性にも喜ばれるデザイン。 それが今季の会社のテーマらしい、私はパソコン画面から視線を下げ何度も紙にデザインを描いては思うようにならず赤ペンでデザインを塗りつぶすをくり返し試行錯誤をくり返していた。 『観月先輩』 『観月ちゃん』 そんな私の元に後輩の絵里奈と先輩の柏木さんがどことなく嬉しそうな表情を浮かべ近づいてくる、そんな二人の声に私は走らせていたペンを止め視線を二人に向ける。 『煮詰まって、美人が台無しってことで・・』 『ホストクラブいきません?すっごくかっこいい人いるお店あるんですよ』 私の眉間に刻まれた皺を右手人差し指で伸ばすように動かしながら柏木先輩と恵利奈は声を弾ませ満面の笑みを向け私は一度デザイン画に視線を落とすと暫く間を置き視線を二人に戻す。 「・・・ええ。お供します」 毎日毎日追われるようにデザイン画と向き合い思うようにならないことに苛立ちを覚え始めていた私にとって彼女達の提案はいい気分転換になると思った。 だからといって別にホストクラブに興味があった訳ではない、どこでもいいからデザインから少し離れたくなっていた。
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