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目立つ色の半被に立て札を持った客引き、煌びやかな衣装を纏う女性、泥酔した様子のサラリーマンの姿が目立ち始める、普段は横目に通り過ぎるだけの街、私には縁のない場所だと思っていた、彼に逢うまでは。
流れていた景色は止まりタクシーのドアが開かれ私は二人に促されつつタクシーを降りた。
私達を降ろしたタクシーはまた闇夜に消えて行く、二人が指差した場所に視線を向けるとそこにはまるで外国のお城を思わせるような外門に扉がひとつ、黒いスーツを身に纏った。
すらりとした長身の男性が一人その扉の傍に立っていた。
私がその建物の様子に驚いているとあっという間に二人は扉の前まで移動していて私は慌てて二人の後に続く、男性は私の顔を見ると柔らかな笑みを浮かべる。
『いらしゃいませ、ようこそDarkness butterflyへ』
男性は私にそう囁くと扉の取っ手に右手をかけ握りそして中へと押し開ける、押し開けられた扉の先に広がった光景は黄金色を思わせるほどの煌々とした明かりとズラリと並んだスーツ姿の男性達。
その男性達が一斉に扉の男性と同じ言葉を言いながら私達に一礼する、その光景はどこかの
貴族にでもなったかのような錯覚を起こさせるものでその様子に圧倒される私をよそに二人はずんずんと進み慣れた感じでコートや手荷物を男性に預ける。
私は気取られながら二人の後に小走りに付いて歩くと私の目の前に大きな手がにゅっと現れ思わず私は声をあげる。
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