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『きゃっ』
「・・・すみません。驚かせてしまいましたか?」
手を差し出した男性は眉を潜め申し訳なさそうな表情を浮かべ私を見詰める、私は直ぐに右手を胸の位置に上げ左右に振る
『いいえ、私のほうこそごめんなさい』
「いきなり過ぎた僕に問題があるのですから、貴女のせいではないでしょ?」
男性は私が頭を下げると益々困った顔をしてしまいどうぞとまた右手を私に差し向ける。
私はその男性の仕草に促されながらコートを脱ぎ男性に預けると男性は私の荷物を抱え賑わう店内を進み奥にある静かな角の席へと案内してくれた。
よく見れば先輩と後輩は席に座り自分のお気に入りにべったりといった感じでとても楽しそうに話していて私は案内された席に腰を据える。
「では、荷物を置いてきますから。そうそう指名ありますか?」
『えっ・・・あの・・初めてでよく分らないのですが?』
「かしこまりました、少々お待ちください」
男性は私の戸惑っている様子を見るとクスリと笑い声を漏らし御伽噺に現れる王子のように右手を自分の胸の位置に置き会釈をすると背を向け歩きだす。
私は一人になりどうしていいか分からないでいると、さっきの男性よりも若い男性が二人私の席に座り饒舌に話始めその様子に私はただただ頷くばかりで気後れするばかりだった。
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