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チノ
~チノ~
太平洋沿岸から53マイル、チノの陰鬱な町並みにも夕暮れがおとずれていた。
なかでも、街の中心部、ラーチストリートはもっとも暗い場所だ。
1ブロックに十本の街灯が立っているが、うち五本の街灯は電球が切れかかって明滅し
残りの三本は真っ暗だ。
チノのこの界隈はいて咳き込むような騒音を立てるポンコツ車が渋滞し、
草むらは捨てられたガラクタでいっぱいだった。
カリフォルニアの太陽でさえここえを明るく照らすのは無理だ。
同時に真っ暗にできるのもない。
夜間には警察の監視ヘリコプターがサーチライトを照射しながら旋回し、
パトカーが悲しげなサイレンを鳴らしながらライトで薄汚れた家々を照らして走るからだ。
チノの暮らしは質素で贅沢とは縁がなかった。
オレンジ郡(オレンジ・カウンティー)の一角というのにチノは灰色に染まっていた。
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