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「ほらあそこが…」
カツン…カツン…
小走りに歩く足音が前方から響いてくる。その人物が僕の目に入った瞬間に、隣りで話している校長の話なんか耳に入らなくなってしまった。
鮮やかな赤い髪。ラフな服装に似合う眼鏡に美術科だろうか…それらしき材料を両手に抱えて少し頭を下げながら僕の横を通り過ぎた。
息をするのさえ忘れてしまうほどの衝撃。
欲しいという感情。
「澤村先生?」
「っ…あ…はい。すみません」
ぼーっとしていた僕に不思議そうに首を傾げる校長。苦笑しながら謝り、校長の話しを聞くことに専念した。
「ここが君の仕事場、カウンセリングルームだ」
中に入るとそこは、あまりにも殺伐としていて、カウンセリングルームだなんて言えるような場所ではなかった。どちらかと言えば応接室だ。
唖然とした僕の肩に校長が手を乗せる。
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