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「君の好きにすると良いよ」
…要するに、“改装費は払わねぇぞ”と言うこと。僕は苦笑して溜め息をついた。
校長が出ていった後に、手に握り締めていた少し弱ってしまった彼岸花を細長い花瓶に挿す。あぁ、部屋に飾りたかったのに。
真っ黒でボロボロのソファに腰を下ろすと辺りを見回した。
黒い家具が多く、あまりよろしくない。壁にかかった趣味の悪い絵も外してしまおう。外を見ると青い空が少し見える。隣りになる本棚が邪魔だ。立ち上がって窓から見下ろすと一面の赤。彼岸花だ。
「…ぁ」
ふと、先程見た彼のことを思い出した。
この彼岸花のように赤い髪を持つ可愛らしい彼。あの眼鏡の奥にはどんなに綺麗な瞳があるんだろう。
「乙女じゃあるまい」
こんなことを思う自分を嘲るように笑った。
恋をしただなんて気持ちをグイグイ心の奥底にしまうように、僕は窓を開けて大きく息を吸い込んだ。
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