彼の名前

3/8
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
    外を見てみると、この部屋の窓からは教会がよく見える。校舎とは少し離れにあって、その回りも彼岸花が咲き誇っていた。何故教会があるのかは知らないが、まぁ美しいものがあるのだから良しとする。 「ん」 ピリリリ…と携帯が不意に鳴り、仕方なくポケットから引っ張り出す。誰だろうか。 サブディスプレイには僕の嫌いな名前が光っていた。 「…頼」 僕の双子の弟、澤村頼だ。何故双子を嫌うかだって?彼は極度な“ブラコン”だから。 僕が付き合った人とは必ず付き合い、僕とのことを洗いざらい聞き出す。更に肉体関係にあった人とは必ず同じように関係を持った。 僕はもともと恋愛をするなら男性だって女性だって構わなかった。好きにさえなれば僕は燃えられたから。でもさすがに兄弟は無理。一度迫られた時には本当にどうしたら良いのかわからなかった。 それにしても、だけど… 「なんで番号知ってるんでしょうね…」 そう。僕は教えて無い。教えて無いのに何故知っていたか。教えた犯人がわかったら締め殺してやる。      
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!