可愛いひと

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    暫くの間はこの家に帰って来ない。あの学校には教員寮と言うのがついていて、そこへ寝泊まりすることになったからだ。 「はぁ…」 しっかり鍵をかけて車庫へと歩く。時間はまだたっぷりあるものの、早めに行くに越したことは無いだろう。寮の僕の部屋も見たいし。出来るならば適度に日当たりの良い部屋が良い。壁は薄いクリーム色で渋めピンク系のカーテンもしくは薄い緑。家具は木材の方が安らぐ。 車に乗りながら自分の部屋へ期待をかける。私立だし、そこそこの部屋だと話しは聞いている。少し楽しみだ。 暫く車を走らせると赤い花がゆらゆらと揺れていた。 「わぁ…綺麗ですね」 その赤い花に囲まれて建っているのが“私立リコリス学園”だろう。 駐車場に車を止めるとその花が何なのかわかった。“彼岸花”だ。細長い緑色の茎に真っ赤な細い花びら。儚く美しい。 1本手に取り近くで見てみる。あまり良い言われ方はしない花だが、やはり綺麗だ。 「部屋に飾りましょうか」 しっかり握り、車に鍵をかけると一息いれてから校舎に向かった。      
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