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雲は 空に 浮いていた。
風に まかせて 浮いていた。
どこまでも どこまでも。
ふわり ふわり ふわり。
日が上り 日が沈む。
月が現れ そして消える。
ただ あるがままに。
ふわり ふわり ふわり。
小鳥のさえずり。
日の光。
木々のざわめき。
花の香り。
全てが 優しく 包んでくれた。
ある日 雲は 驚いた。
それまでに ない 感覚。
身を 焦がすような 何か。
見下ろせば 炎が あった。
炎は 天に 手を 延ばす。
大きく 天に 手を 延ばす。
熱い 想いは 驚きだった。
自分には 無い 何かだった。
雲は 炎に 焦がれた。
あの 炎に 触れてみたい。
あの 熱い 想いに 抱かれたい。
雲は 炎に 焦がれていた。
雲は 降りた。
優しく 包んでくれる 全てを 捨てて。
雲は 炎に 手を 延ばす。
手は 一滴の 雨になる。
雲は 次々 手を 延ばす。
炎を 求めるほど 勢いを増す 雨。
熱い。
指先が 触れる。
なんて 熱い 想いだろう。
炎も 雨に 手を 触れる。
雨は 炎を 抱きしめる。
炎も 雨を 抱きしめる。
熱い。
感じたことのない 想い。
いっそう 強く 抱きしめる。
瞳を閉じ ただ 炎を 感じた。
瞳を開けた時 炎は消えていた。
雲は 散り 消えた。
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