8月2日~爽やかな夜を奏でる

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  約二ヵ月にも渡る夏休みは大学生の特権だ。その聖域を汚されては村上の憤る気持ちもわからなくもない。いかに彼がジャージだとしても、だ。   内心同情しつつも、土産はナースでいいぞ、と皮肉ると、   「よく言うぜ、サワヤカには香月ちゃんがいるじゃねーか」   毒づく村上。香月とは、付き合って半年になる僕の彼女の事だ。   「ああ、香月かぁ、いい奴だったよな……」   煙の先を目で追いながら、表情を曇らせる。目尻には涙まで浮かばせるほどの、我ながら迫真の演技だった。   「まぁそれは無視するとして食堂行こうぜ。腹減っちまったい」   ちょ。   「気になれよ! 死んだの? とかさ」   「お前の嘘は聞き飽きた」   そう言って村上は食堂のある別館に向かって歩きだした。   聞き飽きた、だと……!   こうなったら、香月はラクダの乗り方を知るためにビザの代わりに全長二メートルにもなる巨大ピザを人差し指でガンガン振り回しながらサハラ砂漠に向かった的な事をツイスト&シャウトしてやろうか。   とも思ったが、華麗にスルーされたらたぶん泣いてしまうので止めておいた。   僕はまだ小指ほどの煙草を灰皿に押し込むと、寝癖のついた後ろ頭を追い掛けた。
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