普通

2/2
前へ
/6ページ
次へ
テレビでやっていた映画をたまたま見た。内容は、愛し合った二人がお互いの親に認められず、かけおちをするというなんともありきたりなものだったのだが、涙もろい私はラストシーンの頃にはもう涙と鼻水で顔がすごいことになっていた。そして、映画の中の二人を自分と彼に重ね、こんな山あり谷ありな恋愛をしてみたいものだとロマンチックな妄想をしてみたものの、こんな普通な毎日を過ごしている私たちには到底そんな恋愛は無理だ、と思い、ため息をついた。 映画が終わり、冷静になった後で鏡を見て絶句。こんな泣き腫らした顔で、私は明日彼と出かけるのか!!絶対にからかわれる…と苦笑していたら、携帯電話が聞き慣れたメロディを奏でた。 彼のことを考えていた矢先に彼から電話。こんな時間に何の用だ、と思いながら電話にでると、向こう側から啜り泣きが聞こえた。何事かと思ったら…どうやら私と同じ映画を見ていたらしい。明日、泣き腫らした顔の二人が街を歩く姿を想像し、私は笑ってしまった。そして、思った。 山あり谷ありなんて夢みているだけでいいや、こういう普通な、日常的なことでも幸せを感じることができるのだから。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加