優しい時間

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何故、人は温もりを求めるんだろう。   例え、それが誰かを傷付けていたとしても。   誠実なんて、言葉になんの意味が有るのか俺には分らない。 不誠実さの無い人間なんて、いるんだろうか? 少なくとも、俺は不誠実の塊だろう。   雨が降る夜は一人では眠れないんだ。 だから、あの人の面影を求めてしまう。 優しく抱き締めて頭を撫でてくれる腕を手を、その温もりを。   うさぎは寂しいと死んじゃうんだよ。 ──なんて、言うつもりはないが。 俺は誰も一緒に寝てくれる人がいなくなったら、どうするのだろう。   また代わりを見付けるのかな。 ふと、そんな考えが頭をもたげる。     雨音で目を覚まして、ぼんやりと考えていた俺はベットを降りると唸り声を上げている冷たい箱を開けた。   うだるような暑さに待っていましたとばかりに冷気が帯を広げるように吐き出される。     ミネラルウォーターを一つ取り出すと、直ぐに冷蔵庫を閉めベットへと帰り、優しい温もりへと滑り込む。   キャップを取り外し、そのままベットの中で喉を潤した。   「ん……」 起きてしまったのか、もぞもぞと美智子が寝返りを打つ。 「あつ……い」 そう言うなり、彼女はエアコンのリモコンを手に取り、スイッチを入れた。   「ごめん。起こしたかな。水……飲む?」 尋ねながら、ミネラルウォーターを差し出すと美智子は寝たまま水を飲むと言う俺よりも行儀の悪い事をして、今度は少し寒いのかもう初夏だと言うのに羽根布団にくるまった。   彼女曰く、冷房をガンガンに効かせて羽根布団にくるまって寝るのが最高に気持ち良いらしい。 経済的ではないし、地球にも優しくはない。 そう思うのだが、かく言う俺も最初は驚いたものの今ではその眠り方がとても気に入っているので、ミネラルウォーターをサイドテーブルに置くと、そのまま布団に潜り込もうとした。   美智子は既に小さく寝息を立て始めていて、抱く物がなくなってしまったからだとばかりにパジャマをはだけさせて足を絡め、羽根布団を抱き締めている。   その様子を見て、 「どっちが子供だよ」 俺は苦笑しながら、パジャマを直してやり美智子の髪を撫でた。     彼女も寂しいのかも知れない。   うさぎは寂しいと死んでしまうなら、俺達は寂しいとどうなってしまうんだろう。 そんな事を考えている内に深い眠りに落ちていった。
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