34人が本棚に入れています
本棚に追加
その瞬間、スクロールの様に景色が横に流れる。
プァーー
キィィィ
ドカーン
車のクラクションとブレーキ音が聞こえた後、母さんが宙を舞っていた。
「お母…さん?」
最初はなにが起きたかわからなかったが、母さんが地面に叩き付けられてからやっと状況が理解できた。
俺が車にひかれそうになった時、母さんが俺を横から押して代わりにひかれたんだ。
目の前に赤い液体が流れ、新しい水溜まりが出来る。
「お母さんっ!おかぁぁさぁぁん!」
俺は泣きながら母さんに駆け寄った。
母さんの着ていた純白の衣服は赤く染まり、うつ伏せに倒れていた。
「……はや…と…」
目が半開きの状態で母さんは俺を見る。
「お母さん、死んじゃやだぁぁ」
その頃の俺でもこのままじゃどうなるかわかっていた。
そのとき、母さんが思いもしないことを口にした。
「…はや…と…いま…まで…ありがと…」
母さんは笑顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!