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その後すぐに救急車が来たが、もう母さんは冷たくなっていた。
小雨に打たれながら……俺を残して……。
「これで…お終い」
俺は自分でもわからなかったが、空を見上げるその顔に涙が流れていた。
「颯人さん…グスッ…辛かったんですね」
乙葉は涙を流して真剣に話を聞いてくれた。
「乙葉にくらべたらまだましじゃないかな」
俺は涙を拭って、乙葉に笑顔を見せた。
「颯人さんって強いんですね」
「えっ、俺が?」
「だってそんなに小さかったのに悲しみを受け止めることができたんですから」
乙葉は尊敬のまなざしでおれを見た。
「…いや、俺中学三年まで無口で無表情な奴だったんだよ」
「えっ、颯人さんが!?」
「うん…でも彰ねぇが来てからだんだんいまの俺になってきたんだ」
「彰ねぇ?」
乙葉は首を傾げて考えている。
俺は彰ねぇの紹介をした。
「そうなんだ……彰さんは良い人なんですね」
乙葉には彰ねぇがしたことを話さないでおこう。
彰ねぇは俺で遊んでただけだからなぁ。
「う、うん。彰ねぇには感謝してるよ」
俺は苦笑いをしながら乙葉に話した。
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