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昔、一人の少女がいた。
名前は春宮乙葉。
つい最近母親をなくし、父親に見捨てられた少女である。
「お前母ちゃんも父ちゃんもいないんだってな~」
(いや、やめて)
「まぁ、病気になって生まれた子どもなんて誰でも捨てるけどな」
(うるさい、やめて)
「可哀相なやつ、『やめて~お母さん助けて~』なんてな」
(もう、いや)
『お前なんていないほうが良いんだよ』
(やめてぇぇぇぇ)
その少女は耳を押さえ、走りだした。
「はぁ、はぁ、はぁ。もういやだ……お母さん……助けてよぉぉ」
その少女は病院に帰った瞬間、ベットに入り泣き崩れた。
「どうしたの?」
ふいに横から声をかけられた。
「え?」
少女は驚く。
「走って戻って来たと思ったらベットに入っていきなり泣き出して。いったいどうしたの?」
話しかけて来たのは、少女の隣りのベットのお婆さんだった。
「あのね…グスッ…みんなが私にお母さんとお父さんがいないから、私に病気があるからいじめてくるの」
少女はその質問に答える。
「そうかい、かわいそうに。」
お婆さんは少女の頭をなで、優しい声で言う。
「グスッ…グスッ…うわぁぁん」
少女はお婆さんに抱き付いて泣いた。
「それがお婆ちゃんとの出会いだったんです」
「……そっか、乙葉もやっぱり辛かったんだね」
俺はいまの話を聞き、本当にそう思った。
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