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ばしッ
ドサァァ
「いっつぅぅ」
俺は乙葉を庇い代わりに殴られた。
「見て見て、喧嘩よ」
「あの人足怪我してるよ」
「いまあの娘庇ったよね」
「キャア!!カッコいい」
どんどんやじ馬が多くなってきている。
「颯人さん!!」
「邪魔すんじゃねえよ!!」
「この子は体が弱いんです。どうか許してあげて下さい」
「しるかいな!!じゃあ弁償せんかい!!」
グイッ
俺は男に襟を掴まれた。
「お願いです!!やめてください」
そのとき、誰かが呼んだ警察官が叫びながらこっちに向かってくる。
「コラァ!!そこで何やってる」
「ちっ」
男は手を離し逃げる。
すると周りから拍手が広がった。
「君は男としての役目を果たしたぞ」
「カッコ良かったよ」
「お前は良くやったぞ~」
パチパチパチパチ
「あ、ありがとうございます」
俺はとりあえずお礼を言う。
「颯人さん…その…ありがとうございます…グスッ…グスッ…」
「お、乙葉!?泣くなよ」
「おいおいお前は男だろ、どうすんだ?」
やじ馬がそう言う。
「……乙葉……いこ」
俺は右手で松葉杖を持ち、左手を差し出した。
「…グスッ…はい」
乙葉は涙を拭いながら俺の手を握る。
ヒューヒュー
誰かが指笛を吹く。
俺は無視して乙葉と目的の場所に向かった。
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