1.涙

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そしてライが一人帰路につく頃には、すっかり日は沈んでいた。 「それにしても、バケツをぶら下げて歩くのって結構恥ずかしいな……」 ライはぶつぶつ呟きながら歩いていく。 その時ふと、バケツの中に視線を落とした。 ぐらぐらと踊るタワシやブラシに紛れて、革の財布が一つ。 「……姉さん……」 なんでこんなところに入れておくんだと、ライはずっこけそうになっていた。 大方、掃除をしていて邪魔だったから入れたのだと思われるが。 「仕方ないな、もう」 ライは踵を返すと、いつもシエルが利用しているスーパーへと走り出した。 しかしもうじきスーパーに辿り着くというところで、ライは予想外の光景に出くわした。 シエルが、見知らぬ男に口を塞がれ強引に裏路地に連れ込まれている。 街中に設置されている防犯カメラを避けるため、死角となる裏路地で犯罪が起きるのはよくある話だった。 「ね、姉さんっ!!」 弾かれたように、ライは駆け出す。 手元にあるものはバケツだけだったが、躊躇している暇はなかった。
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