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――周期的に襲いかかる鈍い痛みに、ライは顔をしかめながら目を覚ました。
「こ、こは……」
辺りを見回すとごちゃごちゃとガラクタが散らばっている。
申し訳程度に向かい側についた窓からは、月明かりに映える大きな木の梢が広がっていた。
パッと見た印象では、ここは薄汚い廃ビルの一フロアといったところである。
「そうだ、姉さん、姉さんは……」
立ち上がろうとしたところで、ライは気付いた。
両腕は後ろ手にされて縛られていて、頑丈な結び目は解けそうにない。
「動かないでもらおうか」
その声は、背後から聞こえた。
振り向いた先には、冷徹な目を向けている男と同じように縛られているシエルの姿があった。
「姉さん!」
「ごめんなさい、ライ……」
ライの呼びかけに、シエルは唐突に謝罪をする。
自分のせいでライまで捕まってしまったことを、申し訳なく思っているのだろう。
「お前達は人質だ。間もなくお前等の親父が来る。それまではおとなしくしているんだな」
男はそう言うと、ライに近付き肩を思いっきり蹴り飛ばす。
「うわあっ!」
バランスを崩したライは、足下にあったバケツの中身をぶちまけながら派手に転倒した。
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