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「……え?」
ライは自分の腹部に空いた、小さな穴を見ていた。
ゆっくりと視線を男にずらすと、手元には黒光りするおもちゃのようなものが握られている。
「そんな……、銃器の製造は規制されてるはず……」
ライは言葉と共にこみ上げる血を吐き出すと、スローモーションでも見ているかのようにゆっくりとその場に倒れ込んだ。
「い、いやあああああああっ!!」
じわじわと広がる血だまりを見て、シエルはガタガタと身を震わせながら絶叫をあげる。
だから、抵抗しては駄目だと言ったのに。
「ふん、元々人質は一人予定だったんだ。今さら一人死んだくらい……」
男は面倒くさいことになったと愚痴りながら、むくりと体を起こした。
「おい、何の騒ぎだ」
そこに、音を聞きつけた男の仲間がフロアに入ってくる。
男は倒れて痙攣しているライを指差すと、口を開いた。
「こいつが突然暴れだしてな。このザマだ」
「ほお」
後から来た男はライに近付くと、つま先でちょんと蹴ってみる。
ビクリと、ライはいっそう大きく痙攣してみせた。
「なんだ、まだ生きてんじゃねえか」
男は平然と言いながら懐から拳銃を取り出すと、倒れたままのライに向ける。
それを見たシエルの顔が、再び引きつった。
「やめてええええええええっ!!」
シエルの必死の懇願を嘲るように、乾いた銃声が3発、フロア中に響き渡った。
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